射精・精通はいつから?年齢の目安と保護者の伝え方・家庭での備え
COLUMN
(Release)2026年10月14日
精通(はじめての射精)が起こる時期には、大きな個人差があります。海外の大規模な研究では、初回の射精は13〜14歳前後が中心で、おおむね11〜16歳と報告されていますが、年齢だけを見て「早い」「遅い」と判断できるものではありません。
「いつごろ話せばいいのだろう」「何と言えばいいのかわからない」と感じている保護者もいるでしょう。まだ話していなかったとしても、一度にすべてを説明する必要はありません。体が変化していく時期に合わせて、日常の中で少しずつ伝える方法があります。
この記事では、精通の時期の目安、射精が起こる仕組み、子どもへの伝え方、下着やシーツが汚れたときの備え、学校で学ぶ内容、心配なときの相談先までをまとめます。

射精・精通・夢精・勃起とは
射精、精通、夢精、勃起は、どれも思春期の体について話すときによく出てくる言葉です。関連はしていますが、それぞれ意味は異なります。違いを知っておくと、子どもから質問されたときにも説明しやすくなります。

この4つは別々の現象ですが、思春期には同じ時期に重なって起こることがあります。なお、「精通」には「ある分野について詳しく知っている」という意味もあります。この記事では、体の変化としての「精通」を扱います。
●射精とは
射精とは、精液が尿道を通り、ペニスの先端から体外に出ることをいいます。
精液は、精巣でつくられる精子と、精嚢や前立腺などから出る液体によってできています。ただし、思春期のごく初期には、射精が始まっていても精液中に精子が確認されない場合があります。そのため、「射精=必ず精子を含む精液が出ること」と限定しないほうが正確です。
子どもには、「体が成長していくと、ペニスの先から精液という液体が出ることがあるよ。これを射精っていうんだ」といった言い方でも十分です。「大人になった証拠」と強調する必要はありません。身長が伸びたり声が変わったりするのと同じように、成長の過程で起こる体の変化の一つとして伝えられます。
● 精通とは
はじめての射精を精通(せいつう)といいます。
初経(月経が初めて起こること)と同じように、思春期に生殖に関わる体の機能が発達していく中で起こる節目の一つです。ただし、初経と精通は仕組みが異なるため、医学的にまったく同じ現象というわけではありません。
学校教育でも、思春期に起こる体の変化として「初経」と「精通」が並べて扱われています。
「精通したら急に大人になる」ということでもありません。思春期には、精巣の発達や発毛、変声など、いくつもの変化が数年をかけて重なりながら進んでいきます。
●夢精とは
眠っているあいだに起こる射精を夢精(むせい)といいます。
夢精は、思春期などにみられる生理的な現象です。夢精は睡眠中の性的興奮とそれに伴う射精という生理反応と考えられていますが(PMID: 42362913)、性的な内容の夢を見ているときだけに起こるわけではなく、本人が夢を覚えていなかったり、性的な夢を伴わなかったりする場合もあります。
起こる時期や頻度にも個人差があります。また、「精子や精液がたまりすぎたから、体が外へ出している」と説明されることがありますが、現在の研究では、夢精を単純に「たまった精液を排出するための仕組み」とする説明は支持されていません。
夢精そのものは病気ではありません。回数を友達やきょうだいと比べる必要もありません。
●勃起とは
ペニスに血液が流れ込んで硬くなる状態を勃起といいます。
勃起は、思春期になって初めて起こる現象ではありません。乳幼児期から自然に起こることがあり、性的な興奮とは関係なくみられる場合もあります。そのため、小さな子どもに勃起がみられたとしても、「性に関心を持つには早すぎる」「何かおかしいのでは」と考える必要はありません。
思春期になると、ホルモンなどの変化に伴って勃起を経験する機会が増えることがありますが、本人の意思とは関係なく起こることもあります。人前で起きて本人が困る場合もあるため、からかったり、人に言いふらしたりしないことも大切です。
精通・はじめての射精はいつ起こるか
精通が起こる年齢には個人差があります。海外の大規模な研究では初回の射精は13〜14歳前後が中心で多くは11〜16歳前後とされていますが、これは日本のすべての子どもに当てはまる「正常年齢」を示す数字ではありません。年齢だけでなく、思春期全体の発達を見て考えることが大切です。
●精通の年齢の目安
海外の研究では、初回の射精は13〜14歳前後が中心と報告されています。
デンマークで7,000人を超える男子を対象に行われた調査では、初回の射精の平均年齢は13.4歳でした。別の研究でも、精子が確認され始める時期は13歳台が中心と報告されています。ただし、こうした数字には個人差があり、調査された国や集団も異なります。「13歳になったから精通する」「14歳を過ぎたから遅い」と判断するための数字ではありません。

「14歳」は精通そのものの期限ではありません。医学的には、14歳ごろまでに精巣が大きくなるなど、思春期が始まった徴候がみられないことが相談の一つの目安とされています。
同学年の子どもと比較するよりも、本人が体について疑問を持ったときに相談できる状態をつくっておくことが大切です。
体の変化が進む順番
男子の思春期にはおおまかな流れがありますが、すべての子どもが同じ順序、同じ間隔で変化するわけではありません。
一般的には、精巣や陰嚢が大きくなる → ペニスの発育や陰毛などの変化が進む → 精通や変声などの変化が重なりながら進むと考えるとよいでしょう。
最初の変化として一般的なのは、精巣や陰嚢が大きくなることです。一方、陰毛は別のホルモンの影響も受けるため、「陰毛が生えたら次は必ず精通」といった一本の順番で考えることはできません。
また、こうした変化を保護者が子どもの体を見たり触ったりして確認する必要はありません。本人のプライバシーを守り、「体のことで気になることがあったら聞いていいよ」と伝えておくことのほうが大切です。
●本人が気づきにくい理由
精通は、本人が「この日だった」とはっきり認識できるとは限りません。夢精によって初めて気づく人もいれば、起きているときに射精を経験する人もいます。下着に液体がついていても、それが何かわからないまま過ぎることもあります。
また、思春期初期の精液は成人の精液と同じ状態とは限りません。射精できるようになった初期には、精液中に精子がまだ確認されない場合があることも報告されています。そのため、「精通したの?」「いつだった?」と本人に確認する必要はありません。いつ始まったかを特定することより、起きたときに「これは体の自然な変化だ」と本人が知っていることのほうが大切です。
●射精が起こる仕組み
射精が起こるまでには、精巣で精子をつくる機能が発達し、精嚢や前立腺から出る液体と混ざって精液となり、尿道を通って体外へ出るという流れがあります。子どもに説明するときは、細かな神経やホルモンの働きまで説明しなくても、この流れがわかれば十分です。
●精子がつくられるしくみ
思春期に入ると、精巣で精子をつくる機能が発達していきます。精巣とは、一般に「睾丸」とも呼ばれる、陰嚢の中にある器官です。精子をつくるほか、思春期の体の変化に関わるホルモンをつくる働きがあります。
その過程で精子をつくる機能も成熟します。ただし、「精子が十分につくられるようになった日から射精が始まる」と明確に区切れるわけではありません。精子をつくる機能と射精する機能は、思春期の中で少しずつ成熟していきます。
●精液ができるしくみ
精子は、精嚢や前立腺などから出る液体と混ざり、精液になります。
精嚢は精液を構成する液体をつくる器官の一つです。前立腺は膀胱の下にあり、同じく精液を構成する液体をつくります。
できた精液は尿道を通り、ペニスの先から体外へ出ます。子どもから「おしっこと同じところから出るの?」と聞かれることもあるでしょう。尿と精液は、最後はどちらも尿道を通ります。ただし、射精するときには膀胱側の出口が閉じるなど、通常は尿と精液が同時には出ないような仕組みがあります。
子どもには、「出口につながる最後の道は同じだけれど、体の中で切り替える仕組みがあるんだよ」と説明するとわかりやすいでしょう。
●射精が起こるきっかけ
射精は、起きているときに起こることも、眠っているあいだに起こることもあります。
起きているときには、性的な興奮や体への刺激などによって射精が起こることがあります。眠っているあいだに本人の意思とは関係なく起こるものが夢精です。夢精について「精子がたまったから外に出た」と説明するのは正確ではありません。
子どもには、「体が成長して、射精できる仕組みが働くようになってきたサインの一つだよ」と伝えるとよいでしょう。説明する言葉を保護者があらかじめ一つ持っておくだけでも、子どもから突然質問されたときに慌てずにすみます。
精通の前に保護者が伝えておきたいこと
精通の前に知っておくと役立つことは、大きく「体に何が起こるか」「下着などが汚れたらどうすればよいか」「困ったときは誰に相談できるか」の3つです。「きちんと性教育をしなければ」と構えるよりも、日常生活で必要になる情報を少しずつ渡しておくと考えると話しやすくなります。
●伝えるタイミング
小学校中学年ごろから、体の変化について一度は話題にしておくと、本人も保護者も慌てにくくなります。
学校では第4学年の保健で、精通や初経を含む思春期の体の変化を学びます。家庭でも同じころから、「これからこういうことが起こるかもしれない」と伝えておく方法があります。ただし、9歳や10歳までに一度ですべて教えなければならないわけではありません。子どもの興味や理解度に合わせ、「今日は体の変化」「別の日には下着が汚れたときの話」というように分けても構いません。
すでに精通が起きているかもしれない年齢でも、今から話して遅すぎることはありません。「そういえば学校でも習ったかもしれないけど」と自然に始めることもできます。
そのまま使える声かけ例
話すときは、「正しい説明を全部する」よりも、「知っておくと困らない情報を渡す」と考えると楽になります。

家庭で普段使っている体の呼び名を入口にしても構いません。ただ、「ペニス」「精巣」「精液」など、学校や医療機関でも通じる言葉も一緒に知っておくと、本人が困ったときに説明しやすくなります。完璧な言い方を目指す必要はありません。「この話を家でしても大丈夫」と感じてもらえること自体に意味があります。
●避けたい言い方
子どもが話を閉じてしまいやすい言葉もあります。ただし、保護者が悪いということではなく、どれも戸惑ったときについ出やすい言葉です。たとえば、「もう大人だね」と言われると、本人は体が変化しただけなのに、急に大人として扱われるように感じることがあります。代わりに「体が少しずつ成長してきたんだね」程度で十分です。
「そういうことはお父さんに聞いて」「お母さんに聞いて」と別の人へ話を渡すと、子どもが「この人には聞いてはいけない」と受け取る場合があります。「私もわからないところがあるから、一緒に調べよう」と答える方法もあります。
また、「汚い」「恥ずかしい」「そんなことを考えるのは早い」と評価する必要もありません。自分の言葉で話すのが難しいときは、年齢に合った本やマンガを渡し、「気になるところがあったら聞いてね」と伝える方法でも構いません。
●「特別なこと」にしない伝え方
体の変化の話は、身長が伸びることや声が変わることと同じ並びで扱えます。
「今日は大事な話があります」とあらたまって向かい合うと、保護者も子どもも緊張してしまうことがあります。テレビや本で思春期の話題が出たとき、学校で保健の授業があったとき、下着を買うときなど、日常会話の延長で短く触れるだけでも構いません。
SRHR for JAPANの助産師・有馬祐子さんへのインタビュー「性の話を、特別なものにしない。」でも、性の話だけを特別なものにせず、生活の中で話せる関係をつくることが紹介されています。一度の完璧な説明よりも、何度でも話題にできることを大切にしましょう。
夢精などで下着やシーツが汚れたときに慌てないため、事前に「どう洗うか」「誰が洗うか」「替えをどこに置くか」の3つを決めておくと便利です。当日に詳しく事情を聞かなくても処理できるよう、普段から仕組みをつくっておきましょう。

●乾く前の下洗い
精液がついた衣類は、洗濯表示を確認したうえで、水か低温のぬるま湯で早めに下洗いすると落としやすくなります。
精液にはたんぱく質が含まれています。一般にたんぱく質を含む汚れは、高温によって落としにくくなる場合があります。そのため、熱いお湯を使うより、水または30℃程度までのぬるま湯を使うほうが無難です。
- 汚れた部分を水かぬるま湯ですすぐ
- やさしくもみ洗いする
- 洗濯表示に従って洗濯機などで洗う
においが気になる場合も、まず洗って汚れを落とすことを優先します。特別な消臭用品を必ず使う必要はありません。
●誰が洗うかの決め方
「自分で洗う」「洗濯機や洗濯かごに入れる」「家の人に頼む」など、本人がやりやすい方法を選べるようにします。
「自分の下着なのだから、自分で洗わせなければ」と考える必要はありません。「汚れたら、そのまま洗濯かごに入れて大丈夫」「自分で洗いたいならそれでもいい」と一度伝えておくだけでも、本人は対応方法を知ることができます。
選択肢がわかっていれば、「見つかったら恥ずかしい」と汚れたものを隠す必要も少なくなります。
●替えの下着の準備
替えの下着は、本人が自分で取り出せる場所に少し余裕をもって用意しておくと安心です。
どうすればよいかわからず、汚れた下着を隠したり、処分してしまったりすることも考えられます。下着が減っていることに気づいても、「捨てたの?」「何があったの?」と問い詰める必要はありません。「汚れた下着があったら、そのまま洗濯かごに入れて大丈夫だよ」と処理方法だけ確認しておけば十分です。
枚数を細かく監視するのではなく、困ったときに新しい下着を使える状態をつくることを目的にしましょう。
●気づいたときの対応
下着やシーツの汚れに気づいても、本人が話すまで触れないという選択肢があります。
精通や夢精は、保護者へ報告しなければならない出来事ではありません。洗濯できる状態であれば、いつもの洗濯物と同じように扱うだけでも十分です。「何か言ってあげなければ」と考える必要はありません。声をかける場合も、「下着が汚れたときは、そのまま洗濯かごに入れて大丈夫だからね」くらいで構いません。
本人に「何が起きたのか」を説明させるよりも、プライバシーを守りながら困らない環境をつくることを優先しましょう。
学校ではいつ・何を習うのか
家庭ですべてを抱える必要はありません。学校では、思春期の体の変化や、自分と相手の体を大切にするための知識を発達段階に応じて扱っています。学校で学ぶ範囲を知ることで、家庭で補えることも見えやすくなります。
●小学校の保健で扱う内容
小学校第4学年の保健で、体の発育・発達の一部として初経や精通を学びます。
文部科学省の現行学習指導要領・解説では、思春期になると体つきが変化し、初経、精通、変声、発毛などが起こること、それらの時期には個人差があることを扱います。
第3学年・第4学年用の保健教科書がありますが、「体の発育・発達」の単元で思春期や精通について扱うのは第4学年です。
学校では、同年代の子どもに共通する基礎知識を学べます。一方、家庭では 「実際に下着が汚れたときはどうするか」「家では誰に相談すればいいか」といった具体的なことを伝えられます。学校で習うことと家庭で話すことを、どちらか一方にする必要はありません。
●生命(いのち)の安全教育で扱う内容
「生命(いのち)の安全教育」は、子どもを性暴力の被害者・加害者・傍観者にしないことを目指し、自分と相手の体を大切にすることを発達段階に応じて学ぶ取り組みです。
文部科学省は2026年3月、教材と指導の手引きを改訂しました。社会情勢や法律の変化を踏まえ、「性的同意」について学べる内容も拡充されています。「低学年はプライベートゾーンだけ」「高学年になって初めて同意を学ぶ」と単純に分かれているわけではありません。低・中学年から、相手の気持ちを確かめることなど、同意につながる基本的な考え方を扱います。
実施する学年や教材の使い方は学校や地域の状況に合わせて調整されるため、学校ごとに扱い方が異なる場合があります。
より詳しい内容は、本サイトの「生命(いのち)の安全教育とは」でも確認できます。
家庭と学校の分担
学校は知識の枠組みを学ぶ場、家庭は「困ったときに相談できる」と感じられる関係をつくる場、と考えることができます。
プラン・インターナショナル・ジャパンが全国高等学校PTA連合会の協力を得て、高校生の保護者1,906人を対象に行った調査では、学校での性教育について「もっと充実させてほしい」と答えた人は35%、「必要だが内容には慎重であってほしい」と答えた人は40%でした。
保護者の受け止めは一枚岩ではありません。性教育をもっと充実させたいと考える人にも、扱う内容を慎重に考えたい人にも、家庭でできることがあります。それは、子どもの体について一方的に調べたり確認したりすることではなく、「体のことでわからないことがあったら聞いていい」「困ったときは一緒に考える」と伝えておくことです。
学校と家庭のどちらかだけで完結させず、それぞれの役割を生かすことができます。
射精の話から、自分と相手を大切にする話へ
精通が始まる時期は、生殖に関わる体の機能も発達していく時期です。射精の仕組みを知ることは、自分の体について理解するだけでなく、妊娠や相手の体、同意について考える入口にもなります。恐怖や危険を強調するのではなく、「自分も相手も大切にするための知識」として伝えることができます。
●妊娠の可能性
精子をつくる機能が発達すると、性交によって妊娠に関わる可能性が生じます。
ただし、初回の射精が起きた瞬間から、成人とまったく同じ状態の精液になるわけではありません。思春期の初期には、射精できても精液中に精子が確認されない場合があります。それでも、精通が起きる時期は、生殖に関わる機能が発達している時期です。
子どもには、「射精ができるようになるころは、赤ちゃんができることにも関わる体へ少しずつ変わっていく時期なんだよ」と説明できます。なお、夢精そのもので誰かが妊娠することはありません。妊娠は、精子が女性の生殖器内に入り、卵子と受精する可能性が生じる場合に起こります。
性的同意という考え方
自分の体も相手の体も、本人の意思を無視して性的に触れてよいものではありません。
性的同意は、性行為をする年齢になってから突然教えるものではありません。「手をつないでもいい?」「嫌なら嫌と言っていい」といった日常のやりとりから、相手の意思を確認することを学べます。
プラン・インターナショナル・ジャパンの一億人のためのSRHR調査では、「性的同意」という言葉の認知率は85%でした。一方、性的同意について学んだ経験がある人は18%にとどまりました。また、性的同意を重要と考える人は約9割でした。「言葉を知っていること」と、実際の関係の中で相手の意思を確かめられることには違いがあります。
家庭でも、「嫌だったら嫌と言っていい」
「相手が嫌だと言ったらやめる」
「最初はいいと思っても、途中で気持ちが変わることがある」 といったところから伝えられます。
より具体的に考える場合は、SRHR for JAPANの性的同意チェックも参考になります。
性的な画像・動画との距離
スマートフォンやインターネットを使うようになると、本人が探していなくても性的な画像や動画に接する可能性があります。見てしまったこと自体を責めるより、「わからないことや困ったことがあれば話せる」関係を保つことが大切です。また、性的な画像には、「見る」だけでなく「撮る」「撮らせる」「送る」「ほかの人へ共有する」という問題もあります。
文部科学省の「生命(いのち)の安全教育」でも、小学校高学年以降、インターネットやデジタル性暴力について発達段階に応じて扱っています。
もし、自分の画像を送ってしまった、誰かに撮られた、勝手に共有されたなどのトラブルが起きても、できることはあります。一人で抱え込まず、保護者、学校、公的な相談窓口などに相談できます。本人を責めることより、まず安全を確保し、相談につなげることを優先します。
女の子やきょうだいへの伝え方
精通を「男の子だけが知っていればよい秘密の話」にする必要はありません。
きょうだいがいる家庭では、年齢や理解度に応じて、初経や精通を「思春期にはそれぞれの体にさまざまな変化が起こる」という同じ枠組みで伝えることができます。女の子にとっても、射精や精通を知ることは、異なる体の仕組みや妊娠について理解することにつながります。同じように、男の子が月経について知ることにも意味があります。
家族で一緒に学ぶことで、「男の子の体はこう」「女の子の体はこう」とからかったり、知らないことを恥ずかしがったりするのを減らすことにもつながります。性別にかかわらず、体の特徴や変化の仕方、変化が起こる時期には個人差があります。
心配になったときの相談先
精通の時期だけでなく、思春期全体の体の変化や、痛み、腫れなどの症状によって相談先は変わります。「まだ射精していない」「夢精が多い」という一点だけで判断せず、本人が困っている症状があるか、思春期そのものが始まっているかを含めて考えます。
● 受診を考える目安
射精するときに痛みがある、血が混じる状態が続く、精巣や陰嚢に痛みや腫れがある場合などは、医療機関へ相談を考えます。
また、精通したかどうかではなく、14歳ごろになっても精巣が大きくなるなどの 思春期が始まった徴候がみられない場合も、小児科などへ相談する一つの目安です。一方で、「夢精を一度も経験していない」「夢精の回数が多い」ということだけでは、異常かどうかを判断できません。夢精の起こり方には個人差があります。
特に、片方の精巣に突然強い痛みが出た、陰嚢が急に腫れたといった場合には、早急な治療が必要な病気が含まれることがあります。こうした症状がある場合は、様子を見続けず速やかに医療機関を受診してください。迷う場合は、「受診するほどなのかわからない」という段階で相談しても構いません
● 泌尿器科・小児科・保健室の使い分け

未成年者が保護者の同行なしで受診できるか、保護者の同意が必要かは、年齢、診療内容、医療機関の方針によって異なります。本人だけで受診したい場合には、あらかじめ医療機関へ確認してください。
●子ども本人が使える相談窓口
保護者を通さず、子ども本人が相談先を探せる公的な仕組みがあります。
こども家庭庁のこども相談ガイドでは、心や体のこと、家族、学校、トラブルや犯罪など、悩みの内容に合わせて相談先を探せます。電話やチャットを含め、2026年9月時点で全国約7,600か所の支援先情報につながる仕組みです。
こども家庭庁の「相談窓口」ページにも、性被害、いじめ、心の悩み、妊娠・発達、SNSやネット上のトラブルなどに関する相談先が掲載されています。
自治体の相談先を探す場合も、こども家庭庁の一覧から都道府県を選ぶ方法があります。「家では言いにくいことは、こういうところに相談してもいいよ」とページの存在だけ伝えておくことも、家庭でできる備えです。
よくある質問
>精通が来たことを子どもが話してくれません。確認したほうがよいですか。
確認しなくて構いません。 精通や夢精はとても個人的な体の変化で、保護者に報告しないこと自体は問題ではありません。「困ったら話していい」「下着が汚れたらこうすればいい」と伝え、本人が必要なときに話せる状態をつくっておけば十分です。
>母親から伝えても問題ありませんか。父親のほうがよいのでしょうか。
保護者の性別だけで分ける必要はありません。 子どもが安心して話せる人が伝えることを優先しましょう。直接話すのが難しい場合は、本を渡す、学校の養護教諭に相談するなどの方法もあります。「同性の大人でなければ話せない」と決めつける必要はありません。
>「精通」には別の意味もありますが、子どもに説明が必要ですか。
「精通」には「あることについて詳しく知っている」という意味もあります。学校の保健では体の変化を表す言葉として登場するため、「体の話では、はじめて射精することを精通という」と知っておけば十分です。
>保護者自身が性のことを学んでこなかった場合、何から始めればよいですか。
まず、わからない言葉を一つ調べるところからで構いません 。
「SRHR 1万人調査」では、SRHRという言葉の認知率は25%、内容まで理解している人は9%でした。この結果だけから「保護者が知らないのが普通」とはいえませんが、大人にも改めて学ぶ機会が必要であることがうかがえます。完璧に勉強してから子どもと話す必要はありません。「私も知らないから、一緒に調べよう」と言えることも、大切なコミュニケーションです。
まとめ
精通とは、はじめて経験する射精のことです。起こる時期には個人差があり、海外の研究では13〜14歳前後が中心と報告されていますが、特定の年齢だけで正常・異常を判断することはできません。男子の思春期は一般に精巣が大きくなることから始まり、ペニスの発育、発毛、射精、変声など、さまざまな変化が重なりながら進みます。
家庭でできるのは、「射精や夢精は成長する中で起こる体の変化であること」「下着が汚れたらどうすればよいか」「困ったときは誰に話せばよいか」を、日常の中で少しずつ伝えておくことです。精通した日を確認したり、一度にすべてを説明したりする必要はありません。
学校では、小学校第4学年の保健で精通などの思春期の体の変化を学びます。「生命(いのち)の安全教育」でも、自分と相手の体を大切にすること、境界線や同意、性的同意、デジタル性暴力などを発達段階に応じて学べる教材が整備されています。
プラン・インターナショナルでは、「生命(いのち)の安全教育」の普及をはじめ、子どもや若者が自分の体と権利について知り、尊重できる環境づくりに取り組んでいます。精通について完璧に説明すること以上に大切なのは、子どもが「わからない」「困った」と感じたときに、安心して話せる関係をつくっておくことです。
参考資料
・文部科学省「小学校学習指導要領(平成29年告示)」
・文部科学省「小学校学習指導要領(平成29年告示)解説 体育編」
・文部科学省「学習指導要領に基づく保健教育の推進」
・文部科学省「生命(いのち)の安全教育 指導の手引き(令和8年3月改訂版)」
・文部科学省「性犯罪・性暴力対策の強化について」
・こども家庭庁「こども相談ガイド」
・こども家庭庁「相談窓口」
・プラン・インターナショナル・ジャパン「高校生の保護者を対象とした『心と体を守る教育』についての意識調査」
・プラン・インターナショナル・ジャパン「SRHR white paper 2025」
・ Brix N, et al. “Timing of puberty in boys and girls: A population-based study.”
・ “It Comes at Night: A Nocturnal Emissions Historical Review”
・ Maiolino G, et al. “Nocturnal emissions or wet dreams: modern evidence from a systematic scoping review.”
監修 池田 裕美枝
医療法人心鹿会 海と空クリニック京都駅前院長/一般社団法人SRHRJapan代表理事/NPO法人助成医療ネットワーク理事長 京都大学医学部卒業。内科医として研修を受けた後、「女性のヘルスケアの専門家になりたい」と考えたことから産婦人科に転向。さらに深く学ぶため、2011年にイギリスで、リプロダクティブ・ヘルスディプロマを修了。2013年にはアメリカで女性内科の研修を受ける。 社会的困難女性を支援する人のための ソーシャルワーク・プラットフォーム「KYOTO SCOPE」の運営やユースクリニック開業など、京都と国内外を行ったり来たりしながらSRHRに携わる活動を続けている。

