【開催報告】 第1回対話フォーラム『こどもたちの心と体をまもるために』~IKOKOあいち(いのち・からだ・こころネットあいち)

EVENT

(Release)2026年5月29日

いのち・からだ・こころネットあいち(IKOKOあいち)は、プラン・インターナショナルの協力のもと、2026年4月25日に名古屋市において第一回「こどものいのちの安全と未来をまもる 対話フォーラムあいち」を開催しました。

第1回目となるフォーラムには、当初の想定を大きく上回る100名ほどの方々にご参加をいただき、教育・医療・行政・警察・福祉・企業・大学・市民団体・若者など、多様な立場の方々が一堂に会する対話の場となりました。とりわけ、子ども・学生たちが大人と対等な立場で自らの言葉を発し、社会への提言を行ったことは、本フォーラムの掲げる理念を初回から体現する成果となりました。

当日の模様をお伝えします。

 ◆ 開会あいさつ

中園和貴氏(左) 長島美紀(右)

文部科学省「生命(いのち)の安全教育」担当の中園和貴氏より、本教育の概要説明と、全国の学校での実施を推進したいとの考えが共有されました。続いて、本フォーラム協力団体であるプラン・インターナショナル・ジャパンの長島美紀氏より、生命(いのち)の安全教育の全国実施率が45%にとどまる現状に触れ、「すべての人がこれを学ぶことが暴力を防ぐために不可欠である」とのメッセージが寄せられました。

 基調講演

『「つながりたい」が危ないとき ― SNS時代の女子非行と性被害 ―』

講師:河野荘子氏(名古屋大学大学院 臨床心理学教授)

臨床心理学・非行犯罪心理学を専門とする河野氏より、デジタル社会における子どもの性被害の現状について、心理学的視点からの解説がありました。河野氏は、SNSやインターネットは「ツール」として介在しているにすぎず、それ自体が原因ではないこと、したがってツールを取り上げたり禁止したりするだけでは解決にはつながらないことを指摘しました。

そのうえで、子どもたちを守るために必要な要素として、自己肯定感の育成、相談できる大人の存在、親や教師など大人との人間関係の構築、コミュニケーションスキルの獲得などを挙げ、子どもが被害にあった場合や相談しようとしてきた場合の大人がとるべき対応についても助言がありました。

「子どもは大人の姿を映す鏡」「リアルな関係を大切にするべき」との言葉で締めくくられ、会場には深い納得感が広がりました。

◆ 午後プログラム案内および研究報告

元中学校教諭で生徒指導経験のある竹内和雄氏から、午後の学生パネルディスカッションの趣旨が共有されました。「子どもの生の声を聞く」「その声をもとに大人がとるべき施策を考える」ことを目的とし、年齢や個人の考え方にかかわらず、誰もが平等に発言できる場をつくるという前提条件が確認されました。

続いて大橋渉氏より、過去40年間の報道記事を解析した子どもと性暴力に関する研究結果が報告されました。

●    被害者の年齢層(乳幼児・小学生など)によって被害の特徴に違いがあること

●    年代別に必要な予防策が異なること、具体的方策の提言

●    台湾における学校施設での防犯カメラ導入事例の紹介

●    現代の性犯罪に使用される盗撮機器の現物展示

展示された盗撮機器は、ペットボトル、置時計、USB充電器などに偽装された極めて発見困難なものであり、参加者からは大きな反響がありました。会場の子ども参加者からは、防犯カメラの設置について「犯罪防止のためには必要」「教室にあると監視されているように感じる」など、率直な意見が出されました。

◆ ランチ交流会

会場のランチ提供を担当した星ヶ丘のTOMO CAFFEオーナー・早川友子氏より、食を通じた地域活動と教育、食の大切さを伝えるための事業への思いが紹介されました。

また、私立東海中学・高校の教員たちが起業したクラフトビール醸造事業「Dragon Brewing」代表の杉本有優氏からは、次回フォーラムのテーマである「キャリア形成」に関連し、「大人自らが挑戦する姿を子どもに見せたい」との思いが語られました。

 ◆ 実践報告「生命(いのち)の安全教育」

「生命(いのち)の安全教育」を公立学校で展開し成果を上げている千葉市と埼玉県富士見市の事例について、現場の実施担当者より報告がありました。

【千葉市の事例】 池畑博美氏(NPO法人虹色のたね理事長)

過去に起きた教員による性暴力事件を受け、千葉市教育委員会と民間団体が連携して教員向け研修プログラムを作成したことを皮切りに、約5年にわたり公立学校で「生命(いのち)の安全教育」を実施してきた経緯と成果が報告されました。

成果として特に強調されたのは、この教育を実施したことで「性暴力事案が表面化するようになった」という点です。

「この教育をやったからこそ表沙汰になった。やってよかったと思ってほしい」 ― 池畑博美氏

また、郵便代無料の手紙形式で子どもが悩みや相談を投書できる「にこにこ安全サポート」という相談システムが紹介されました。「深刻な事案が解決に導かれたケースもある。知らない人だけど安心して相談できる大人がいると信用して、書いてきてくれている」との報告がありました。

【富士見市の事例】 櫻井裕子氏(さくらい助産院代表)

埼玉県富士見市、主に市立富士見西中学校で実施されている「いのちの授業」について、助産師の櫻井氏より報告がありました。包括的性教育に近い、自尊感情を高める内容を扱っていること、「歯止め規定はあるが、教えてはいけないことにはなっていない」という認識のもと、避妊やコンドームの歴史・効果について児童が探究し発表を行っていることが紹介されました。

希望者には実物のコンドームを手に取り人形に装着する場も提供しているとのことで、「生徒には偏見がなく、まじめに学んだ」「生徒たちは、自分たちの関心に応えてアシストしてくれる大人を信用する」と話されました。実施した地域でクレームはなく、満足度98%以上のアンケート結果が得られているとのことです。

生徒の声として紹介された次の言葉は、会場に強い印象を残しました。

「知らない方がもっと恥ずかしい」― 富士見西中学校 生徒

さらに櫻井氏は、性暴力の加害者臨床における包括的性教育も担当していることに言及。「正しい情報を学ぶ場がなく、ポルノなど真偽不明の情報を真に受けて、無自覚に暴力を身につけていく」と、加害者側の課題も提起されました。

◆ 学生パネルディスカッション

竹内和雄氏(右)とIKOKOあいち代表・伊藤加奈子氏(右)

竹内和雄氏のファシリテーションのもと、中高生・大学生をパネリストとしたディスカッションが行われました。ハイタッチ、じゃんけん、アイスブレイクを取り入れた場づくりにより、学生だけでなく大人も一緒に笑い、会場の空気が一気に和らぐ時間となりました。

序盤は、データをもとにデジタル空間に生きる子どもたちの現実について事実確認が行われました。「何歳からインターネットを使っているか」「携帯電話の所持率は学年別でどの程度か」「毎日ネットに接続する子の割合は」といった問いにクイズ形式で答えながら、逐次「どう思う?」「どうしたらいいと思う?」と竹内氏が会場に投げかけました。

さらに、ランチタイムに学生参加者約30名を対象にGoogleフォームで実施したアンケート結果が共有されました。「ネットで知らない人とやり取りしたことがある人」「ネットで卑猥なことや脅しを言われるなどして嫌な思いをしたことのある人」などの設問に対する回答は、社会問題が会場内の子どもたちの実感としても反映されていることを示すものであり、大人参加者は衝撃を受けた様子でした。

子ども・学生から出された主な声

「自分のことがどうでもいいと思えた時、会ってみてもいいかと思うことがある」

「ネットは悪影響があるかもしれないが、ネットという居場所があって救われる面もある」

「デジタルネイティブじゃない世代が一律に、危険だから禁止っていうのは抑圧だ」

「ネットでもリアルでも、いい人はいい人」

最後に、子どもたちは「親」「先生」「行政」「自分たち自身」に対する提言シートを作成し、続くメインパネルディスカッションでの発信に備えました。

◆ 愛知県警少年課あいさつ

愛知県警少年課課長補佐の中森良則氏より、SNS等を介した子どもをめぐる犯罪に対する警察の取り組みが紹介されました。取り締まりの強化に加え、サポートセンター救援隊として少年補導職員による啓発活動を行っていること、そして「一番大切なのは児童の発するサインを周囲の大人が気づいてあげること」と話され、本フォーラムの目的との共有が強調されました。

◆ メインパネルディスカッション

テーマ:「デジタル社会における性暴力予防啓発について」

登壇者は、IKOKOあいち代表・伊藤加奈子、文部科学省・中園和貴氏、名古屋市教育委員会教育支援部学校保健課長・津田淳一郎氏、名古屋市子ども青少年局保育部担当課長・佐々木律子氏、千葉市・池畑博美氏、富士見市・櫻井裕子氏に加え、学生代表が登壇しました。

まず各登壇者から、学生パネルディスカッションを受けての感想が述べられました。「子どもたちの生の声に感動した」「世代間で異なる考え方を知ることができた」「リアルな人間同士の信頼関係の大切さに共感した」などの声が共有されました。

続いて、子ども・学生たちが作成した提言が共有されました。

親への提言

「大人の理想を押しつけないでほしい」

「大人だってスマホばかり見ていないか?」

「子どもが悩みを相談しようとしている時は、まずは否定せずに話を聞いてほしい」

先生への提言

「トラブルを隠蔽しないでほしい」

「先生に言ったら学年集会が開かれてしまうから言いたくない」

「いつも命令口調の先生や怖い先生には相談できない」

「先生を信用して相談したのに、ほかの先生に共有されてしまうのが嫌」

「先生を信用して相談したのに、他の先生に共有されてしまうのが嫌」との声に対しては、問題解決のために情報共有が必要な教師側の論理と、生徒側の思いとのバランスをどう取るかについて活発な議論が交わされました。

行政への提言

「授業にiPadを導入しすぎないでほしい。みんな授業中にゲームをしている。紙の教科書で勉強したかった」

「法案などを作る際には小中高校生の意見も聞いた上でやってほしい」

「学校によってネットリテラシーや性教育を学んだ子とそうでない子が出ない方がいい。シンプルに全校でやればいい」

自分たち自身への提言

「大人を敵視せずに頼ってもいい。大人に分かってもらうためには、こちらから発信することも大切」

「友だち関係で、せっかく対面で会っている時にスマホばかり見ないでほしい」

「子どもと大人の中間にいる存在として」と語った大学生は、

「傍観者にならず、子どもと大人の媒介者になりたい」  ― 大学生パネリスト

と発言し、会場から大きな拍手を受けました。また別の学生からは「性教育を茶化させない。大人の態度が子どもにそうさせていると思う」との発言もありました。

子どもたちの意見表明を受けて、パネラーと会場参加者からは「学ぶべきは大人の方だと感じた」「『媒介者になる』というフレーズを自分もこれから使わせてもらいたい」「大人としてグサッとくる言葉がたくさんあった」といった感想が寄せられました。

◆ 閉会

竹内氏は「スマホでの問題は、心の問題。ネットが悪いんじゃない」と示唆し、最後にIKOKOあいち代表の伊藤加奈子より閉会のあいさつが行われました。

伊藤氏は、「私たちはもっと子どもたちの力を信頼しなきゃいけないと感じた」と語りました。

次回開催に向け、「『生きる力を育てる』とはどういうことなのだろう。学校現場だけにお任せでなく、私たちができることは何なのか考えていきたい」と意気込みを述べ、第1回フォーラムは閉会しました。

● フルレポートはこちらよりご覧いただけます。

#性的同意チェック

いつかくるその日のために。
性的同意についてチェックするための問いを集めました。

View More
記事一覧へ

Contact
お問い合わせ

本活動については
以下からお問い合わせください。
SRHR for JAPAN キャンペーン事務局

srhrforjapan@plan-international.jp

(平日9:00~17:30)

YoutubeInstagramX