次期学習指導要領のパブリックコメント実施中―「生命(いのち)の安全教育」で重視したい2つのポイント
COLUMN
(Release)2026年10月28日
次期学習指導要領に向けたパブリックコメントが始まっています
文部科学省では現在、「次期学習指導要領等に向けた審議まとめ」について、パブリックコメント(意見募集)を実施しています。
中央教育審議会教育課程部会は2026年10月5日、次期学習指導要領等に向けた基本的な方向性や、各教科等の改善の方向性を示した「次期学習指導要領等に向けた審議まとめ」を公表しました。文部科学省は、この審議まとめについて広く意見を募集しており、締め切りは2026年11月5日(木)23時59分です。次期学習指導要領等は、2028年度以降、順次実施される予定です。
今回の審議まとめでは、SRHR for JAPANがこれまで政策提言や各地域での実践を通じて取り組んできた「生命(いのち)の安全教育」についても言及されています。
「生命(いのち)の安全教育」はどう位置づけられている?
今回の「次期学習指導要領等に向けた審議まとめ」では、「生命(いのち)の安全教育」について、次のように記載されています。
「性犯罪・性暴力に関する様々な課題が指摘される中、『生命(いのち)の安全教育』は、国による教材やそれを用いた実践があることから、この成果を十分に踏まえ、教材の内容と学習指導要領との関連性を分かりやすく示し、更なる活用・指導の充実が図られるようにする。」
「生命(いのち)の安全教育」が次期学習指導要領の検討の中で取り上げられ、教材と学習指導要領との関連を示しながら、さらなる活用や指導の充実を図る方向性が示されたことは重要です。
一方、全国のすべての子どもが必要な学びを受けられるようにするためには、教材の活用を促すだけではなく、「何を学ぶのか」という教育内容と、「どのように継続的に実施するのか」という実施体制の両方を整えていくことが必要だと、SRHR for JAPANは考えています。

SRHR for JAPANが重視する2つのポイント
SRHR for JAPANでは、これまでの政策提言や学校・地域での実践から得られた知見を踏まえ、今回の学習指導要領改訂にあたり、特に次の2点を重視しています。
1.「生命(いのち)の安全教育」の教育内容を明確にする
「生命(いのち)の安全教育」は、子どもを性暴力の被害者・加害者・傍観者にさせないための教育です。
一度きりの授業や講演としてではなく、子どもの発達段階に応じて、継続的・体系的に学べるよう、次期学習指導要領の中に明確に位置づけていくことが重要です。
その際には、例えば次のような内容を、年齢や発達段階に応じて学べるようにする必要があります。
・自分と他者の身体を尊重すること
・自分の身体や行動について自分で決めること
・自分と相手との境界線(バウンダリー)
・同意とは何か、同意を確認すること
・対等で互いを尊重する人間関係
・性暴力を防ぐこと、被害に遭ったときに相談すること
さらに、子どもたちを取り巻く環境は大きく変化しています。
SNSを通じたやりとりや画像・動画の送信、オンライン上での性的な要求や被害、生成AIによる画像の加工・生成など、デジタル環境における性被害・性暴力を防ぐための学びも、これからの「生命(いのち)の安全教育」に欠かせない視点です。
子どもが単に「危険を避ける」方法を学ぶだけでなく、自分と他者の権利を尊重し、困ったときには助けを求められる力を身につけること。そのための学びを、発達段階に応じて積み重ねていくことが求められます。
2.住んでいる地域によって学びに差が生まれない実施体制を
もう一つ重要なのが、実施体制です。
「生命(いのち)の安全教育」を学校で実施するかどうか、どのような内容を扱うかが、それぞれの学校や教員だけに委ねられてしまえば、地域や学校によって子どもたちが受けられる学びに差が生じる可能性があります。
学習指導要領に位置づけることとあわせて、実際に学校現場で実施できる環境を整えることが必要です。
そのためには、教職員向けの研修を充実させるとともに、授業で活用しやすい教材や指導資料、保護者への説明を支える資料などを整えていくことが重要です。
また、性、同意、性暴力、デジタル上の性被害などについては、高い専門性が求められる場合もあります。
すべてを教員だけで担うのではなく、必要に応じて、医療、福祉、NPOなどの外部専門家が学校教育に関わることのできる仕組みを整えていくことも必要です。
学校、自治体、家庭、地域、そして外部専門家がそれぞれの役割を生かしながら連携することで、学校現場の負担を過度に増やすことなく、より専門性の高い学びにつなげることができます。

すべての子どもに必要な学びを届けるために
子どもが性暴力から自分や他者を守るために必要な知識や力は、住んでいる地域や通っている学校によって受けられたり、受けられなかったりしてよいものではありません。
SRHR for JAPANは、今回の学習指導要領改訂において、
①「生命(いのち)の安全教育」の内容を明確にし、発達段階に応じて継続的・体系的に学べるようにすること
②地域や学校による格差が生じないよう、教職員研修、教材・指導資料、外部専門家の活用などを含めた実施体制を整えること
の2点が特に重要だと考えています。
「生命(いのち)の安全教育」を、一部の学校や熱心な教員による取組にとどめるのではなく、全国のすべての子どもに保障される学びとして定着させていくことが必要です。
パブリックコメントは2026年11月5日まで
文部科学省による「次期学習指導要領等に向けた審議まとめ」へのパブリックコメントは、2026年11月5日(木)23時59分まで受け付けられています。e-Govのウェブサイトから、審議まとめや意見募集要領を確認し、意見を提出することができます。
e-Gov「次期学習指導要領等に向けた審議まとめ」パブリックコメント
SRHR for JAPANでは、今後も学校や地域での実践、子ども・若者や保護者、教育関係者の声を政策に届けながら、すべての子どもが、自分と他者を大切にし、安心して生きていくために必要な学びを受けられる環境づくりを進めていきます。

