【開催報告】JPFP「生命(いのち)の安全教育プロジェクトチーム」勉強会~韓国の取り組みから考える「実装」の仕組み
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(Release)2026年10月22日
2026年10月21日、国際人口問題議員懇談会(JPFP)「生命の安全教育を考えるプロジェクトチーム(PT)」主催の勉強会が、参議院議員会館で開催されました。
今回のテーマは、9月に行われた韓国視察で得られた学びを踏まえ、日本の「生命(いのち)の安全教育」をどのように学校現場へ広げ、すべての子どもに届けていくかということです。

当日は、JPFP会長の上川陽子衆議院議員、PT座長のあべ俊子衆議院議員、PT事務局長の寺田静参議院議員をはじめ、韓国視察に参加した尾辻朋美参議院議員、野村美穂衆議院議員、小林さやか参議院議員、西岡義高衆議院議員が参加しました。
さらに、伊藤孝恵参議院議員、堀内詔子衆議院議員、伊藤聡衆議院議員、竹谷とし子参議院議員も参加し、「生命(いのち)の安全教育」の今後について意見を交わしました。
現在、次期学習指導要領の改訂に向けた議論が進む中、重要なのは、「生命(いのち)の安全教育」や「性的同意」といった内容を教育政策に位置づけることだけではありません。
制度に書かれたことを、どうすれば全国の学校で実際の学びにできるのか。
今回の勉強会では、韓国の経験を手がかりに、まさにこの「実装」の仕組みが議論されました。
韓国視察で見えてきた「性教育を支える仕組み」
SRHR for JAPANは、2026年8月31日から9月1日にかけて、国会議員とともに韓国・ソウルを訪問しました。

韓国では、性教育や性暴力予防に関わる民間・行政の関係機関を訪問するとともに、韓国の国会議員や専門家との意見交換を行いました。
今回の勉強会では、視察に参加した議員から、それぞれの学びや問題意識が共有されました。
韓国と日本には、性やジェンダーについて公の場で語ることへの抵抗感など、文化的・社会的に共通する課題もあります。
一方、韓国では性暴力が大きな社会問題として認識されてきたことを背景に、法制度の整備や、行政による予防教育の推進体制が構築されてきました。
視察参加者から繰り返し示されたのは、「深刻な問題が起きてから対策するのでは遅い」という認識でした。
性暴力が起きた後の被害者支援は不可欠です。しかし、それだけではなく、性暴力そのものを起こさないための予防教育を進める必要があります。
子どもたちを被害者にしない。そして、加害者にもさせない。
そのために、子どものころから自分と相手の心と体を尊重することや、境界線、性的同意などについて学ぶことが、「生命(いのち)の安全教育」の重要な役割です。
日韓比較から考える「生命(いのち)の安全教育」の推進体制

勉強会では、お茶の水女子大学ジェンダー研究所の申琪榮(しん・きよん)教授が、韓国と日本のジェンダー政策や「生命(いのち)の安全教育」に関連する政策の推進体制について講演しました。
講演で特に重要なポイントとなったのが、「教材が整備されること」と「すべての学校で継続的に教育が行われること」は別の問題であるという指摘です。
日本でも「生命(いのち)の安全教育」の教材や指導の手引きは整備されてきました。
しかし、教材が存在するだけで、すべての子どもが実際に学べるわけではありません。
誰が実施に責任を持つのか。
教員をどのように支援するのか。
必要な予算や人材をどう確保するのか。
そして、実際にどの程度実施されているのかを、どのように確認するのか。
こうした「実施するための仕組み」まで含めて設計することが重要です。
韓国に学ぶ「義務化・報告・可視化」
韓国の取り組みとして紹介されたのが、性暴力、家庭内暴力、デート暴力、デジタル性暴力などに関する予防教育について、実施を求めるだけでなく、実施後の報告まで含めて管理する仕組みです。
学校などが実施状況を報告し、それを行政が一元的に把握できるシステムが設けられています。
これは、「教育をしてください」と学校に求めるだけではなく、誰が責任を持つのかを明確にし、実際に行われているかを可視化するという考え方です。

重要なのは、韓国の制度をそのまま日本へ導入することではありません。
日本でも、「生命(いのち)の安全教育」をすべての学校で実施していくのであれば、
- 誰が実施について責任を持つのか
- どの程度実施されているのか
- 地域や学校による格差がないか
- 教員にどのような支援が必要か
- 教育の質をどのように確保するか
を継続的に確認できる仕組みが必要です。
学習指導要領への位置づけを「ゴール」にしない
今回の勉強会でも大きな論点となったのが、次期学習指導要領と「生命(いのち)の安全教育」の関係です。
学習指導要領の中で、「生命(いのち)の安全教育」や性的同意に関する学びがより明確に位置づけられることは、大きな前進につながります。
しかし、制度に位置づけられたからといって、自動的に全国の学校で十分な教育が実施されるわけではありません。
実際の教育現場では、
地域間の教育格差
教員への支援不足
専門性のある外部講師の確保
学校や地域に残る抵抗感
など、さまざまな課題があります。
だからこそ、これから考えなければならないのは、「学習指導要領に何を書くか」と同時に、「書かれた内容をどう実施するか」です。
学校と外部専門家が連携する仕組みを
「生命(いのち)の安全教育」を広げるために、今回の議論で改めて注目されたのが、外部専門家の役割です。
性暴力、性的同意、SRHR、デートDV、デジタル性暴力などは、専門的な知識を必要とするテーマです。
すべてを学校教員だけに担ってもらうことには限界があります。
一方で、外部専門家による一度限りの授業だけで十分ということでもありません。
学校には、日常的に子どもたちと関わり、継続して学びを積み重ねられるという重要な役割があります。
そのため、学校が継続的な学びを担い、外部専門家が専門性を補う。
こうした役割分担を制度として支えていくことが重要です。

「性的同意」を、知識ではなく「生きる力」に
生命(いのち)の安全教育で重要なテーマの一つが、「性的同意」です。
性的同意について学ぶことは、単に「嫌ならNOと言う」ことを教えるものではありません。
自分の心と体について、自分で決めてよいこと。
相手にも同じ権利があること。
相手が嫌だと言っていなくても、それだけで同意したことにはならないこと。
一度同意したとしても、途中で気持ちを変えてよいこと。
そして、困ったときには誰かに相談してよいこと。
こうしたことを、子どもの発達段階に合わせて繰り返し学ぶ必要があります。
それは、性暴力を防止するためだけの教育ではありません。
自分を大切にしながら、相手も大切にする人間関係をつくるための教育です。
デジタル性暴力への対応も重要な課題に
今回の質疑では、子どもたちがインターネット上で接する性的コンテンツや、デジタル性暴力についても議論されました。
SNSや動画サイトなどが日常生活の一部となった現在、学校で性について十分な情報を学ぶ前から、子どもたちはオンライン上の性的な情報に触れる可能性があります。
さらに、性的な画像の無断共有や拡散、画像の加工・生成、オンライン上での性的な嫌がらせなど、新たな形の被害も生まれています。
韓国の経験からは、教育だけでなく、被害が生じた際に迅速にコンテンツを削除する仕組みや、プラットフォーム事業者が負うべき責任についても議論する必要性が示されました。
子どもたちに「気をつけるように」と求めるだけでは不十分です。
教育、被害者支援、制度、プラットフォームの責任を組み合わせて、子どもたちが安心して生きられる環境そのものをつくる必要があります。
SRHR for JAPANが目指す「すべての子どもに届く教育」
SRHR for JAPANは、政府が推進する「生命(いのち)の安全教育」を重要な土台としながら、人権、ジェンダー平等、関係性、自己決定、性的同意なども含めた「心と体を守る教育」を、すべての子どもに届けることを目指しています。
必要なのは、一度きりの授業ではありません。
子どもの発達段階に応じて、
「自分の体は自分のもの」
「嫌なことには嫌と言っていい」
「相手の気持ちや境界線も大切にする」
「困ったときには相談していい」
という学びを積み重ねていくことです。
そして、その機会を、一部の学校や自治体だけのものにしないことが重要です。
どこに住んでいても、どの学校に通っていても、すべての子どもが自分と相手の心と体、そして権利について学べる社会へ。
韓国視察と今回のJPFP勉強会で得られた学びを、日本の政策と学校現場での具体的な実践につなげていきます。
よくある質問
生命(いのち)の安全教育とは?
子どもたちが性暴力の被害者、加害者、傍観者にならないために、自分と相手の心と体を尊重することなどを、発達段階に応じて学ぶ教育です。性的同意や、困ったときに相談することなども重要なテーマとなります。
生命(いのち)の安全教育と包括的性教育は同じですか?
重なる内容は多くありますが、同じものではありません。包括的性教育では、身体や生殖だけではなく、人権、ジェンダー、関係性、性的同意、自己決定、健康、ウェルビーイングなどについて、発達段階に応じて継続的に学ぶことを重視します。
SRHR for JAPANでは、「生命(いのち)の安全教育」を重要な土台として、より包括的な「心と体を守る教育」につなげていくことを目指しています。
なぜ性的同意を学校で学ぶ必要があるのでしょうか?
性的同意は、自分の心と体について自分で決める権利と、相手の意思や権利を尊重することに関わる考え方です。性暴力の予防だけではなく、子どもたちが対等で尊重し合える人間関係を築くためにも重要な学びです。

