【調査レポート】性暴力被害を、誰もが安心して相談できる社会へ
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(Release)2026年10月23日
LGBTIQA+への対応から見る「性暴力ワンストップ支援センター」の現状と課題
SRHR for JAPANでは、誰もが性別や性的指向、性自認などにかかわらず、性暴力の被害を受けたときに必要な支援につながることのできる社会を目指しています。
その取組の一環として、一般社団法人Broken Rainbow-japanに委託し、全国の性暴力ワンストップ支援センターを対象とした「2026年度 性暴力ワンストップ支援センター実態調査」を実施しました。
本調査では、特にLGBTIQA+の人々への対応に焦点を当てながら、各センターの相談・支援体制や研修、医療機関との連携、地域における役割などについて調べています。
全国のワンストップ支援機能を持つ52センターを対象に郵送調査を実施し、2026年8月20日から9月末までに37センターから回答を得ました。回答率は71.2%でした。Broken Rainbow-japanが2021年に実施した調査とも比較し、この5年間に見られた変化についても分析しています。なお、2021年と2026年では質問項目や回答センターが一部異なるため、数値の比較はあくまで参考として行っています。
LGBTIQA+からの相談を把握するセンターは増加
今回の調査で特に注目されるのは、LGBTIQA+からの性暴力被害の相談を実際に受けていると認識するセンターが増えていることです。
2021年の調査では、LGBTIQA+からの相談を「受けている」と回答したセンターは31センター中16センター、51.6%でした。2026年調査では、37センター中30センター、81.1%となっています。

この数字は、同じセンターを継続して追跡した結果ではないため、「LGBTIQA+の性暴力被害そのものが増えた」と判断できるものではありません。一方で、全国の多くの支援センターに、すでにLGBTIQA+の人々から相談が寄せられていることを示す結果といえます。
性暴力被害は、特定の性別や性的指向、性自認の人だけに起こるものではありません。支援を必要とする人がどこにいても、一人ひとりの状況やニーズに応じた支援を受けられる体制が求められています。
「相談できる」ことと「必要な支援を受けられる」ことには、まだ差がある
一方で、今回の調査からは、相談の入口を広げることだけでは十分ではないという課題も見えてきました。
37センターのうち36センターは、相談対象について「性別等の定めなし」と回答しています。しかし、LGBTIQA+からの性暴力被害相談について「全ての相談員が対応可能」としたセンターは14センターにとどまりました。
そのほか、「全てではないが対応可能」が15センター、「対応が難しい場合もある」が6センター、「対応不可」が2センターでした。

また、「性のありようによって受けられない支援がある」と回答したセンターも3センターあり、男性被害者への医療支援などが挙げられています。ただし、支援上の課題は、こうした回答があったセンターだけに限りません。
全国共通で「誰でも相談できる」ことを案内していても、一人ひとりの状況やニーズに応じた支援を実際に提供できるとは限らないのです。
センターによって提供している支援の内容や範囲にも違いがあります。地域のさまざまな支援資源を生かし、不足する支援を充実させながら、一人ひとりに必要な支援を提供できる体制をどう整えていくのかという課題が見えてきます。

研修と医療連携にも課題
多様な被害者への支援を実現するうえで、相談員への研修は重要な基盤です。
しかし、全相談員を対象としたLGBTIQA+に関する研修について、「実施なし」と回答したセンターは37センター中15センターでした。実施したセンターにおいても、LGBTQ等の基礎研修の実施が14センター、LGBTIQA+の性暴力被害について具体的な研修を実施したのは、わずか5センターでした。 また、2023年以降に関連する研修を実施していないと回答したセンターも35センター中21センターに上っています。
医療機関との連携にも違いがあります。
医療支援を実施している30センターでは、産婦人科・婦人科との連携は100%でしたが、精神科は76.7%、泌尿器科は50.0%、外科は30.0%でした。
被害者が必要とする医療は、性別や身体の状況、被害の内容などによって異なります。一人ひとりが必要な医療を受けられるよう、地域の医療機関との連携や相談体制を整えていくことが必要です。
「誰でも相談できます」から、一歩先へ
調査から見えてきたもう一つの課題が、広報のあり方です。
「誰でも相談できます」というメッセージは重要です。しかし、それだけでは、若者、男性、LGBTIQA+、障害のある人、外国語での相談を必要とする人など、これまで支援につながりにくかった人に、自分も相談してよい場所だと伝わらない可能性があります。
誰が利用できるのかを具体的に示すことに加えて、どのような方法で相談できるのか、どのような支援を受けられるのかまで明確に伝えることが重要です。外国語での相談についても、相談員が直接対応するのか、通訳を利用できるのか、別の機関につなぐのかなど、実際に利用できる支援を分かりやすく示す必要があります。
性暴力ワンストップ支援センターが担う、地域の学びの場としての役割
今回の調査からは、性暴力ワンストップ支援センターが、被害後の相談支援だけでなく、地域での教育や啓発にも重要な役割を果たしていることが分かりました。
多くのセンターではすでに地域で研修や講座を行っており、「同意」や「性教育」なども提供可能なテーマとして挙げられています。 一方で、「LGBTIQA+と性暴力」を提供可能なテーマとして挙げたのは、37センター中6センター(16.2%)にとどまりました。
性暴力の被害を受けた人の困難に周囲が気づき、孤立させず、適切な支援につなぐためには、被害が生じた後の支援とともに、同意や人権、性について学ぶ機会を社会全体で増やしていくことが欠かせません。
一方で、その役割を個々のセンターの努力だけに委ねることはできません。国や自治体が、人員、研修のための時間、教材、財源、地域の関係機関との連携などを支える仕組みを整えていくことが求められます。
誰も取り残さない性暴力被害者支援に向けて
SRHRとは、「性と生殖に関する健康と権利」です。
その根底にあるのは、自分の身体について自分で決められること、暴力や差別を受けることなく生きられること、そして必要なときに適切な情報や支援にアクセスできることです。
性暴力被害者支援においても、「相談対象に含まれている」だけではなく、誰が相談しても、その人の性別、性的指向、性自認、年齢、障害、使用言語などにかかわらず、必要な支援につながれることが重要です。
SRHR for JAPANでは、本調査の結果も踏まえながら、性暴力の被害を受けたすべての人が安心して相談し、必要な支援を受けられる体制づくりと、性暴力を生まない社会に向けた教育・啓発の充実を働きかけていきます。
「2026年度 性暴力ワンストップ支援センター実態調査」
調査実施:一般社団法人Broken Rainbow-japan
委託:公益財団法人プラン・インターナショナル・ジャパン
発行:2026年10

