【開催報告】高校生の保護者を対象とした「心と体を守る教育」についての意識調査結果発表と授業の全国展開スタートについての記者会見
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(Release)2026年3月13日
「SRHR for JAPAN」キャンペーンを展開する公益財団法人プラン・インターナショナル・ジャパンは、高校生の保護者を対象とした「心と体を守る教育」についての意識調査と調査結果を踏まえて全国展開する「心と体を守る」授業について、2月に文部科学省記者クラブで会見を行いました。関係者7名(うち2名はオンライン)が会見に臨み、取り組みを紹介しました。

最初に、プラン・インターナショナル アドボカシーグループリーダーの長島美紀が調査結果やキャンペーンの今後の展開について説明しました

プラン・インターナショナルは世界80か国以上で活動している国際NGOですが、日本の女の子、若い女性の課題にも焦点をあてています。インターネット やSNSによる性被害の低年齢化が非常に深刻です。教育現場では教員の負担や不安があり、十分かつ適切に教えられていないのが現状です。
昨年の意識調査で、10代の7割が「性に関する知識を学びたい」と回答する一方、半数が「学校や家庭で十分な情報を得られない」と答えています。そこでプランはSRHR for JAPANキャンペーンの一環として、全ての子どもが心や体を守るために必要な知識を得るための政策提言や実践に取り組みを始めました。
まず性教育についての保護者の考えを知るため、一般社団法人全国高等学校PTA連合会の協力を得て昨年9~10月、全国の保護者1906人にアンケート調査を行いました。
学校での性教育について「もっと充実させてほしい」という回答が35%、「必要だが内容には慎重であってほしい」が40%でした。 保護者の不安は、① SNSやネットの情報との混乱が生じないか②教員が適切に教えられるのか――という教育の質と教える態勢についてでした。方策としては、①専門家が授業に関わる②保護者への事前説明がある――があげられました。
教えてほしい内容は、「妊娠・避妊・性感染症の予防」などへの具体的な対処についてというのが最も多く、次に SNSやネット上の性トラブル対応、それから「性的同意と『ノー』という力」と続きます。さらに性教育に期待する役割として「自分を大切にし、他者を尊重する姿勢を育てる教育をしてほしい」という回答が約半数で、「心の発達や人間関係についても教えてほしい」が約3割と、人との関係性に踏み込んだ教育への期待がわかりました。
これらを踏まえ、2026年6月に宮城県南三陸町で性教育のパイロット授業「心と体を守る教育」を行います。小学校6年生と中学3年生を対象に、「性的同意」「SNS・インターネット上のリスクとリテラシー」「危機場面への具体的対処」について、外部講師と担任教員とで授業を担当します。
次に、一般社団法人全国高等学校PTA連合会会長、田名部智之氏がアンケート調査についてコメントしました

PTAは子どもたちを守ることを考えていますが、 SNSが広がり、性的同意、ハラスメント、多様性など、どんどん時代が進むなかで、子どもたちがどういう情報を持っているのか、学校ではどういうことを教えているのかがわからず非常に不安に思っていました。PTAに属するメンバーは約190万人で、その中野1906名が調査に回答しました。数は少ないですが、調査の結果には大変共感しました。非常にありがたく、これから活用もしていきたいと思います。
続いてSRHRキャンペーンのアドバイザーである辻由起子さん(こども家庭庁参与、社会福祉士)が、性教育の重要性や効果について大阪市での事例をもとに解説しました

大阪市では児童虐待防止の観点から10年以上前に「生きる教育」が「性・生教育」として制度化されました。虐待死する子はゼロ歳児が最多です。予期しない妊娠が主な原因です。目の前でパートナー同士のDVを見た子どもが傷つく心理的虐待も課題となっています。 人権が守られていないと家庭内でDVが生まれ、児童虐待につながり、暴力を容認したまま子どもが社会に出るといじめや様々なハラスメントにつながってしまう場合があります。 この連鎖を断ち切るために、「生きる教育」は人権を中心に置いています。
大阪市生野区の田島南小中一貫校で、人権教育を土台にし、暴力を言葉にかえる国語科教育、体と心を守るための性教育を柱にして、学年ごとにプログラムを作りました。その結果暴力行為が収まると、けがを伴う暴力はゼロになり、授業に集中でき、保護者対応も減り、学力も全国学力学習調査の平均を上回るようになりました。
これらを踏まえ、大阪市会は性教育の充実を求める意見書を内閣総理大臣や文科省宛に提出しました。それが文部科学省の「生命(いのち)の安全教育」につながっていきました。
一番大事にしているのは「受援力」を高めること。「『助けて』と言っていいんだよ」と子どもたちに義務教育で伝えていかなければなりません。
※「生命(いのち)の安全教育」は文部科学省が2021年度から推進。道徳や保健などの授業で、子どもたちが性暴力の加害者、被害者、傍観者にならないよう、生命の尊さを学び、発達段階に応じて自分や相手を尊重する態度を学ぶ。
宮城県南三陸町での「心と体を守る教育」パイロット授業について、小松祐修教育長が思いを語りました

南三陸町は、宮城県の副島沿岸部に位置し、人口約1万1000人、小学校は5校、中学校は2校です。
昨今、児童生徒が SNSに起因する性犯罪に巻き込まれたり、加害者になってしまったりする事案が多く報道され、教育現場では大きな不安を感じていました。特に性暴力については、被害者の尊厳を著しく傷つけ、将来に渡って心身に重大な影響を及ぼすものであり、決してあってはなりません。
南三陸町では「生命(いのち)の安全教育」の実践経験がなく、今回のパイロット授業はまたとない機会です。自他の命を尊重し、心と体の健康を保つこと、そして自分自身の人生を主体的に選択していく力を育むとともに、困難に直面した時に一人で抱え込まず、支援を求める力「受援力」を育てる教育になることを期待しています。教職員や保護者の意識を高め、地域が一体となって実践者になれたらと思っています。
南三陸町のパイロット授業は外部評価を行います。担当する青山学院大学の苅宿俊文教授が概略を説明しました

地域や学校での関係性に即した「生命(いのち)の安全教育」の必要性について評価します。
(1)保護者と学校の情報共有と信頼構築の必要性(2)メディアリテラシー教育の必要性(3)外部専門家の導入の必要性 について、「心と体を守る教育」パイロット授業と「情報リテラシーや他者との関係性」という二つの観点から外部評価します。
具体的には、「知っているか」(知識・理解)⇒「考えて判断できるか」(思考・判断)⇒「実際にできるか」(技能・行動)、授業の前後での子どもたちの変化を見ていきます。また保護者や教員、外部講師にもインタビュー調査をして南三陸町ならでは教育のあり方が見えてくるようにしたいです。
プランは愛知県で行われる新しい取り組みに共催します。femUniti株式会社CEOの鈴木世津さんが2026年度に行うプロジェクトを説明しました

デジタル性暴力やネット上のトラブルは待ったなしです。行政や学校だけに任せず、市民や専門家、企業や大学など関心を持つ人たちが役割を分かち合い連携する「SRHRあいちモデル」の確立をを目指します。
具体的には、2026年に年3回のフォーラムや勉強会、ネットワーキングを開催します。第1回は4月25日に名古屋市で、デジタル性暴力と「生命(いのち)の安全教育」をテーマにフォーラムを行います。第2回は、SRHRとキャリア教育をテーマに、自分の命と体を大切にすることが未来の選択にどう繋がってくるかを考えます。第3回は、企業・地域のコミュニティにおいて子どもを暴力から守る枠組みをどう作るかを議論します。
最後に産婦人科医伊藤加奈子さんが、医師の立場から性教育の必要性を訴えました

中学高校での性教育や、居場所のない若者たちの居場所支援などを通じて子どもたちと接しています。スマホなどの利用によって性被害・加害はどんどん低年齢化し、小学校でパパ活をやったり、中学校で画像を生成してお小遣いを稼いだりという現状があります。子ども同士の性加害も増えると予想されますし、AIも加わって、大人がもうついていけてない状況です。
先生方の負担感も大きいことから、私のような外部講師や養護教諭はじめ皆で工夫して「生命(いのち)の安全教育」を広げていきたいです。

